種のまわりじゃないところ

我が家はみんな食いしん坊で、

毎日デザートまでしっかり食べてた。

特に多かったのが季節の果物。

母はいつも台所で果物を切りながら、

自分は皮の近くや種のまわりを食べて、

私たちにきれいにカットされた果物を

出してくれる人だった。


入院中、毎日病院に通う時に食べものを

持っていってた。

母の生まれ育ったお隣の県の鮎の塩焼きだったり、

いつものおかきだったり。

特に多かったのがやっぱり季節の果物だった。

桃を美味しそうにぱくぱく食べる母を見れて

幸せだった。


仕事を続けながら、介護の資格もとって、

毎日病院に通って、最後はお家で看取れて、

自分でもなかなか頑張った、という思いもある。

同時に11ヶ月間ならもっと頑張れただろう、

という思いもある。


治る病気ではないし、早期発見したからって

どうこうなる病気ではないけど、

あの時こうしていれば、、という思いは尽きない。


でも、全てがあのタイミングだったから、

母の大好きな春のあの美しい日に見送ることが

出来たんだ、と自分を納得させるしかない。


私は今後もずっと果物を食べる度に思うだろう。

もっと母に食べさせてあげたかった。

種のまわりじゃないところ。